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第15回 PEファンドの実務〜日本の銀行と買収金融〜

CVC Asia Pacific シニアエグゼクティブ/東洋学園大学客員教授 −添田 眞峰


日本の銀行と買収金融

前回は企業価値とレバレッジについて説明した。
今回は 「日本の銀行と買収金融」 について説明する。


【日本の銀行と買収金融】

欧米では企業買収を買収対象企業の資産やキャッシュフローを
担保とした買収資金の調達が可能であり、ローンだけでなく債券
発行などいろいろな資金調達手段が考えられる。

1980年代にアメリカでLBOが盛んであった頃、その資金の主要な
貸し手は日本の銀行であった。
LBOの買収金融は買収対象会社の資産やキャッシュフローにのみ
依存して貸し出しを実行する手法である。
買収取引後の対象会社は負債比率が大きく上昇するので、貸出
リスクは高くなるが、リスクに対応して応分のリターンがあること
が魅力である。

日本の銀行は、国内では親会社保証や不動産担保に依存する取引
慣行を続けていたが、海外ではこの時期すでにキャッシュフローに
依存した貸し出しを行っていたのである。

日本国内では、バブル経済の崩壊とこれに伴う不良債権の増大が、
銀行をますますリスクに対して保守的にして、キャッシュフロー金融
はなかなか浸透しなかった。
しかし、最近になって不良債権問題が一段落し、新たに収益源を
求める動きが出始めて、漸く大手都市銀行を中心として買収金融
にも積極的に取り組む姿勢が出てきた。
こうして現在では買収金融は大手都市銀行や信託銀行等から比較的
広範に調達が可能になってきたのである。

次に、対象企業が生み出すキャッシュフローと貸付金返済の安全性
について銀行の立場から見てみよう。

買収金融は買収先の資産、キャッシュフローを担保にする貸付である。
銀行は貸出審査の課程で、投資ファンドが買収対象企業のDDを実施
するのと同様に、貸手の観点からDDを実施する。

銀行の視点は、
@対象企業が生み出すキャッシュフローと貸付金返済の安全性、
A担保としての資産価値、
B経営者のコミットメントとバイアウトストラクチャーの健全性
である。

視点の違いは、投資ファンドが企業価値を生み出すキャッシュフロー
のアップサイドシナリオにより関心があるのに対し、銀行はキャッシュ
フローのダウンサイドリスクを重視することである。

ここでもう一度、負債と資本の違いを思い起こしてみよう。
貸手は企業のキャッシュフローから資本より先に貸付金と利息を回収
できるが、企業価値の増加に対する分配は享受できない。
キャッシュフローが増加すれば貸出金の安全性は高まるが貸手の
収益が高まることはない。

皮肉にも、キャッシュフローが増加すれば金利条件の改定の要求が
出て貸手の収入は減額され、さらには期限前返済によって収入が
なくなることもある。
しかし、キャッシュフローが落ち込めば金利や元本の回収が出来な
くなり直接損失につながる。

こういうわけで、貸手は程よいキャッシュフローの安定を望みながら、
キャッシュフローが下方に触れるリスクに強い関心を払うのである。

貸出審査に当たっては、借手の返済能力に関心をもつ銀行としては、
当然ながら予想されるキャッシュフローにより元利金の支払いがどの
程度カバーされるかを貸付判断や貸付金額・返済条件の判断基準と
する。

具体的には、
イ)毎期のフリーキャッシュフローが元利金あるいは利息の支払に対し
何倍あるか(元利金、“利息のカバーレシオ”と呼ぶ)、
ロ)総資産が借入金の何倍になるか(“ギアリング”)を保守的な観点で
審査する。

借入人が用意する事業計画の利益計画、資金計画をベースに売上や
利益率の達成可能性を加味した固めの数字に修正した幾つかのケース
を作成し、借入金の利息支払い、元本の返済能力を各年度のキャッシュ
フローのカバーレシオを比較吟味するのである。

カバーレシオやギアリングレシオの水準を何倍まで許容するかは、
その時点の金融市場のリスク許容度による。
一般的には元利金のカバーレシオ1.3〜1.5、利息のカバーレシオ
2以上を目安としている。

今回は 「日本の銀行と買収金融」 について説明した。
次回は担保としての資産価値について説明する。

 


●ご注意●
この講座は、著書「プライベートエクィティ投資」の要約を掲載 していますので、
無断転載はご遠慮ください。


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