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第16回 PEファンドの実務〜担保としての資産価値〜

CVC Asia Pacific シニアエグゼクティブ/東洋学園大学客員教授 −添田 眞峰


担保としての資産価値

前回は日本の銀行と買収金融について説明した。
今回は 「担保としての資産価値」 について説明する。


【担保としての資産価値】

買収金融では原則として対象会社の全資産を担保に入れる。
日本の担保制度では個別物件ごとに抵当権や質権を設定する
必要がある。

企業資産全体に集合的な担保権を設定する制度がないので
銀行の観点から見ると不便である。
すべての資産に抵当権を設定登記するのでは、登記費用も嵩むし、
時間もかかる。
したがって、実務的には主要な資産に抵当権の設定登記を行い、
その他の資産に関しては抵当権設定契約は結ぶが登記を留保する
などの便法が取られている。
このあたりは、各銀行の取引姿勢の弾力性に負うところが大きい。

企業資産担保といいながらも、日本の銀行は物的担保とりわけ
不動産担保に依存する傾向が強く、キャッシュフローと物的担保の
価値を見ながら貸し出し金額を決めているのが実情である。
このためソフト資産が大きい企業や、サービス業のバイアウトは
貸出金額が相対的に抑えられる傾向にある。

銀行の関心事は、
1、担保価値が保全され、資産に対する優先権が確保されること
2、借入人が債務不履行に陥った状況では、迅速且つ効果的に
支配権を確立できることである。

このため銀行は、借入人が銀行借入以外に有利子負債を負担
することや、重要資産の売却並びに重要資産に他債権者からの
担保設定を容認するといったことには特に関心を払い、新たな負債
の増加や、抵当権の設定は了解事項とされる。
さらに、これらに追加して投資先株式の担保差し入れを求められる
こともある。

さらに銀行は経営者のコミットメントとモニタリング体制にも関心を払う。
買収事業の成功は経営者と経営者の事業計画に対するコミットメント
があり、加えて、投資ファンドと経営者のチームが一体となって
価値を創造するために協働する体制が出来上がることが鍵である。

企業は変化の激しい環境と厳しい競争の中で、企業価値の向上を
目指すわけであるから、企業の活動状況と環境を適宜把握し、
適時に適切な施策を打っていかなければならない。
とりわけ、苦境に陥るような状況を早期に感知し、経営者と
投資ファンドが一体となってこれを克服する努力が取られることが
重要なのである。

買収金融の貸し手はエクイティのリスクこそとらないが、実質的
には企業の状況が悪化すれば投資ファンドに代わり企業を引き受けな
ければならないので、投資ファンドと同じようなレベルで事業運営に
関心を払うのである。

バイアウトとはそれぞれの役割は異なるが、経営者・投資ファンド・
銀行が役割に応じ企業のリスクを負担し、また、創造された
キャッシュフローをリスク負担に応じて配分するプロジェクトである。

銀行はプロジェクトの直接当事者なのであるから、銀行は一歩
下がりながらも、経営者の事業へのコミットメントと投資ファンドの
企業に対するモニタリングの体制が確立しているかを注意深く
検証するのである。

次回は、キャッシュフローだけを返済原資とする買収金融と、
日本の物的担保主義金融の買収借入契約の全般的な問題
を述べたいと思う。

今回は 「担保としての資産価値」 について説明した。
次回は買収借入契約について説明する。

 


●ご注意●
この講座は、著書「プライベートエクィティ投資」の要約を掲載 していますので、
無断転載はご遠慮ください。


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