CVC Asia Pacific シニアエグゼクティブ/東洋学園大学客員教授 −添田 眞峰
▼デューデリジェンスの費用対効果
前回はデューデリジェンスの手順について説明した。
今回は 「デューデリジェンスの費用対効果」
について説明する。
【デューデリジェンスの費用対効果】
実践的な観点から最も重要な点はDD(デューデリジェンス)のコスト
と効果を考慮したうえでのプロセス管理である。
1.投資条件の優先権が確保できていない段階でどの程度のコスト
をかけるか
2.限られた時間と予算の中で何を集中的に調査する必要があるか
3.そのためにどのような体制でDDに臨むか
などの視点でDDのプロセスを考える必要がある。
初期条件として考慮すべき点はDDの費用を負担しても取引を前に
進めるだけの価値や魅力がその案件にあるか否かの判断である。
多くの場合、事業の魅力に確信が持てずリスクレベルについて一定の
心象形成ができない投資案件を深追いすることは、結果的に時間の
無駄になる。案件の潜在的な価値を理解した上で、しかしそれでも
限られた時間と予算の中で何を集中し調べるかを決めるのである。
詳細な法務DDや会計DDは優先交渉権を取得後に実施し、優先交渉権
取得前のDDは投資対象の潜在価値評価に関連する重要事項に絞りDD
を行うべきである。
時には、他の入札者と競業の状況の中で、売り手側は取引の実現性を
担保するために優先交渉権を与える以前に相当量の情報開示を行うと
共に、買い手側にDDを完了の後取引条件の詳細かつ明確な提示を求める
ことがある。
このような取引では、応札者は入札に敗退すれば高額のDDコストを負担
しなければならないので、売り手から見れば取引に対する真剣度を
買い手に踏み絵させることにもなる。
買い手は投資対象の潜在的な価値や魅力を直感的に判断しながらDDの
コストと効果を比較考量しつつ、何を、どのような体制で調べるかを
決めなければならない。
今回は 「デューデリジェンスの費用対効果」 について説明した。
次回はビジネスデューデリジェンスについて説明する。
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この講座は、著書「プライベートエクィティ投資」の要約を掲載
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